表現によって繋がることの比喩として、幻想の島や幻の島といったイメージが僕のなかではよく馴染む。表現は、人と人とが幻想の島で出会うようなものだと僕は思うのだ。
もちろんその島は幻だから、現実にはないし、実写の映像で思い浮かべようとするとなかなか難しい。ただ、霧に包まれたユルリ島の風景は、幻の島と言える姿をしているかもしれない。
北海道の東端にあり、自然保護のために人の上陸が厳しく制限された無人の島、ユルリ島。もともと、haruka nakamuraさんの曲『新しき光』のMVで、この島と、そこに暮らしている馬たちの存在を僕は知った。海霧が立ち込める光景のなかで、白馬が草を食んでいる。音楽も美しいから余計に、この世のものとは思えないような幻想的な雰囲気に満ちている。
この映像の撮影者でもある写真家の岡田敦さんが、ユルリ島と馬たちをめぐる「物語」について写真や取材を通してまとめた『エピタフ 幻の島、ユルリの光跡』というドキュメント本がある。
本は、写真集というわけではないものの、文章のあいまの写真も多く、なぜユルリ島に馬が暮らすようになったのか、そして、なぜ次第に減っていっているのかが、取材をもとに丁寧に記されている。霧に覆われた島と馬たちの歴史を見ると、「幻の島」と称したくなるのもわかるような気がする。