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雨宿りノオト

承で紡ぐ岩井俊二『四月物語』

若い頃、「書く」仕事に就こうと模索し、一時期脚本教室に通っていたとき、起承転結の「承」は年齢を重ねないと書けない、といったことを先生が言っていた。詩人は若くてもなれるけど、脚本は経験が必要なんだ、と。

承が一体どういうことを指すのか、まだよくわからない面も多い。ただ僕のなかで美しい承の物語というと、岩井俊二監督の『四月物語』を思い出す。東京の武蔵野にある大学に入学するために北海道から上京してきた、松たか子さん演じる卯月の恋物語を、詩情豊かに描いた映画だ。

この作品は、いわゆる「ドラマチック」な恋の話ではなく、触れれば壊れそうな、淡い恋の繊細さをそのまま丁寧に掬っていくような話で、二十代の前半くらいだったか、当時DVDで初めて観たときは、それほど沁みることもなかったし、象徴的なシーンくらいしか記憶に残っていなかった。

でも、久しぶりに観ると、色々な場面を通して紡がれていくささやかな「承」が、とても美しかった。名付けようもない、何気ない日常の光景が、その人や、生きること、物語にとって不可欠なものとして優しく光っている。その一つ一つにもう全てが詰まっているような、広がりのある承だなと思う。